少女七竈と七人の可愛そうな大人

この本は桜庭さんの作品の中で特に心を惹かれたものでした。やはり一番衝撃的だったのが「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」ですが、これは違う意味でダントツ、でした。「荒野」にも似たような感情を少し抱いたかな? ――”切ない恋物語”を書くのが本当にお上手だなと溜息が出るばかりです。思わずこっちまで登場人物同様に胸を苦しませるのはそのせいなのだろうな。

とにかく七竈と雪風が可愛い。美男美女の話をここまで嫌味なく表現されるとただ「憧れ」としてしか読めなくなる。それに、妬みを生ませないくらいに展開が早い。大事なことをさらっと伝え、こっちが勝手にドキドキしなくちゃいけなくなる。「え?いいの?大丈夫なの…?!」みたいな展開が幾つもあるし、その度この二人の切なさに触れる。その切なさがあまりにも「究極に切なく」て、救いの手を差し伸べたくなる。

最後は涙が止まらなかった。
永遠に別れてしまった二人。
ずっと共にいたくて、それができなかった二人。
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」でも、「少女には向かない職業」でもそうだったけど、子供の無力さが桜庭さんの作品では多く描かれている気がする。どんなにもがき苦しんでも、大人の決めた運命には(または大人の作り出した運命には)逆らえないのだと堂々と伝えてくる。本当は認めたくない現実なのに、その堂々さに自然と素直に受け止めている自分がいる。逆に爽快に感じさえする。
誤魔化されるのは嫌だ。綺麗事だって嫌いだ。醜いものは醜いと言ってほしい。汚い世界をリアルに伝えてほしい。だからこそ桜庭さんのような著者が私は好きなのだと思う。


お別れって、新しい出会いのはじまりとかいうけれど、この小説を読み終えた直後はどうしてもそう思えなかったかな。別れの絶望をとことん味わされた感じ。取り返しのつかない、もう永遠と巡り合うことのない別れって、こうやってとことん悲しんでもいいのかもしれないと、何故かそういった優しい気持ちに 少し経ってからなったような気もした。
別れをとことん悲しむ。
それってすごく愛してたってことかもしれない。


もう一度、巡り合ってほしい そんな二人の物語。

少女七竈と七人の可愛そうな大人

少女七竈と七人の可愛そうな大人